着物コーディネート(春)
洋服でも季節があるように、着物も季節で柄を変えたり着こなしを変えておしゃれが楽しめます。今回は、春に着る着物の文様についてお話致します。
春に合う着物の文様
春は、寒い冬が終わり暖かくなってくるので様々な花が咲き始める時期です。
この時期は、周りの花を邪魔しないような柔らかい色合いの着物を着る事や、着物の柄については以下の文様がオススメです。
桜
桜は日本を代表する花で、優しい色合いに上品な美しさを持っている事から海外の人からも人気の高い花となっています。
桜の開花時期は3月下旬から4月半ばが多く、学校などに植えられているのをよく見かけるかと思います。
この時期卒業式や入学式がある事から、桜は人生の転機をつかさどる花とされ、卒業、入学には欠かせない花となりました。
また、桜は一斉に花を咲かせる事から「物事の始まり」や「豊かさ」を意味しとても縁起の良い文様となっています。
桜は優しく上品な色合いが特徴となり、まるで日本人女性の上品さをそのまま表したような花です。
淡いピンク色の着物には、白の帯で柔らかさを出したり、あえて濃い赤色を付けてメリハリをつけても可愛らしくなります。
桃の花
桃の花は、皆さんもご存じの通り果物の桃が実る前に咲く花で、桜とは違い濃いピンク色が特徴のとても可愛らしい花となっています。
また、桃は日本産という印象が強いですが原産地は中国となり、中国では昔から邪気を払い不老不死を与えられると信じられてきました。
中国から日本に伝わった際にも桃には神秘な力があると伝えられ、日本最古の歴史書でもある古事記には、日本神話の女神としても知られているイザナギノミコトが桃を投げて鬼女を退散させる場面が描かれているそうです
古くから邪気を払うという意味を持つ事から、桃の花や桃は正月や祝儀の時などに図柄として使用されました。
桃の花が描かれている着物は、明るめのピンクが背景として使われる事が多いので、金色の帯で華やかさを足したり、黒色の帯で全体を引き締めたりなどもいいでしょう。
菖蒲
菖蒲は水辺に自生する植物で、日本では北海道から九州までの地域で見る事が出来ます。
紫や青色の花を咲かせる菖蒲は、女性の気品ある美しい姿を映しだしているようにも見受けられます。
菖蒲と言えば細長い葉が特徴ですが、この葉が刀のように見える事や爽やかな香りがする事から、中国では邪気を払う男の子の縁起物として軒に吊るしたりしていました。
中国の影響を受け、日本でも奈良時代には端午の節句で飾られるようになり、また勝負や尚武という言葉が菖蒲と同音の為、菖蒲の文様は武士に好まれました。
古くから魔除け・厄除けの意味を持つ菖蒲の模様は、縁起がいい吉祥文様の中にも含まれています。
菖蒲が描かれた着物は、濃い青や紫、白など落ち着いた色合いが多いので、濃い青には水色、紫には金色、白には緑や紫の帯が合います。
また、柄の多い着物には、同じく柄物の帯など付けるとオシャレ上級者になれます。
藤
藤はつる性の植物で、一房に小さい薄紫色の花がいくつも付いているのが特徴です。
気品漂う美しい紫色は、古来日本でも高貴な色とされ、枕草子にも貴なるものと書かれています。
そして、藤はとても繁殖力が高く木やポールなどがあると巻き付きながらどんどん成長していく事から長寿、子孫繁栄の象徴とされています。
また、藤の名前から不二や不死に繋がり縁起がいい事から、藤原家が家紋や名前に入れていたので、現在では有職文様となりました。
藤の花は、紫色なので着物の背景は黒や白などが多く、白の着物には藤の花と同じ紫や、黒の着物には金色の帯でゴージャス感を添えたり、ピンクの帯で可愛らしくするのもいいかと思います。
椿
椿は日本原産の木で、国外では朝鮮や台湾などで自生している植物です。
現在でも美容系などで椿油などが販売されていますが、椿油が使われ始めたのは平安時代からで、油や化粧品、さらには不老不死の薬としても用いられていました。
また椿油は、平安時代に高貴な色と言われていた紫を生地に染める際、生地と染料くっつける役割を持つ媒染剤として使われた事から、色々な物に活用できるとの事で聖なる花と言われるようになりました。
色々な物に活用出来る椿ですが、椿の花は散る時枝からポロリと落ちる事で武士などには縁起が悪いとされ、家紋などにも使われなかったそうです。
しかし、椿は古来から神が宿る木と言われ邪気を寄せ付けないと信じられてきたので、今では縁起が良いとされる吉祥文様として多く用いられています。
椿の花は赤や白・ピンクなどがあり、赤の花には白や黒の着物、白の花には黒や黄色、ピンクの花には黒や緑など様々な背景色に合います。
椿の花は赤と白の単色で存在感がありますので、帯はシンプルなものを付ける事で椿の花をより引き立てます。
牡丹
牡丹は中国が原産の美しい花で、元々は花を観賞するのではなく木の根の樹皮を使って薬を作っていたそうですが、綺麗な花を咲かせる事から観賞用に変わったそうです。
また、美しい大輪の花を咲かせる事から、どの花よりも美しいという意味を込めて百花王とも呼ばれ、中国では新年を祝う花として珍重されました。
日本では、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿はユリの花」ということわざがあり、それぞれの花で日本女性の美しさが表されています。
百花王とも呼ばれている牡丹は、高貴や富貴、美しさの意味を持ち、現在では吉祥文様の1つとされています。
牡丹の花は1つ1つがとても大きいので、着物の模様にすると存在感を感じさせるようなデザインです。
黒の着物では上品さ、白の着物では可愛らしさが表現でき、帯には銀色や金色を合わせると華やかさを演出出来ます。
(今回ご紹介した春の文様は一部となり、上記以外でも様々な文様が存在致します。)
春に備えて新しい着物を準備する為に、この記事が少しでもお客様のお手伝いになれば幸いです。
また、春は暖かいと言っても日によっては肌寒い日などもありますので、その時は薄い羽織などを着ていくと防寒対策が出来ていいかと思います。
羽織には長さに違いがあり、羽織って膝下までくる物は長羽織と言います。
短い羽織はカジュアルな装いの時、長羽織はフォーマルな印象がありますのでパーティやちょっとしたよそ行きの時などにピッタリです。
またお茶会などの室内の時は、長羽織ですと座った時に裾を踏んでしまう事もありますので、そのような場合には、室内に入ってから脱ぐようにしましょう。
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