着物や帯といった織物・染物装飾としてつける図形・図案、色の組み合わせに対して、「文様」や「模様」「紋様」といった言い方や書き方があります。東日本では「紋様」、西日本では「文様」が好まれるといわれていますが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
「ことばのハンドブック」によれば、広い意味で一般的に使う場合は「模様」とし、美術や工芸における模様の様式をさすことばとしては「文様」という慣用が確立しています。織物・染物などの模様を 「紋様」と呼ぶことがあります。
模様の「模」は模写や模型に用いられるように、物のおおよその形やその意図を写し取ることの意図が強く、文様の「文」は、地域や時代によっても異なりますが、具体的な図形を表す場合に用いられることが多くみられます。
紋様の「紋」は「糸篇に文」で、糸で文様を表した、刺繍や織物技法によって形づくられた図形・造形に用いられ、家系を象徴する標である「家紋」が例としてあげられます。
ここでは、「文様」という言葉を用いますが、帯や着物に用いられる文様には、その成り立ちによってつけられたいろいろな名称があります。
例えば、鶴の羽を丸く表現して鶴全体が丸の中に納まるようにした文様を「鶴の丸文」というように、モチーフの加工法による名称には「丸」や「捻じ」が使われたり、配列・配置による名称には「繋ぎ」や「散らし」が用いられるなど、名称によってどんなパターンの文様であるかがわかります。
繋ぎ(つなぎ)
基本となるひとつのモチーフを縦・横・斜めに隙間なく繋げていく文様で、唐花の「亀甲繋ぎ」や 同じ大きさの円を四分の一ずつ重ねていく、又は重ねて繋いでいく文様「七宝繋ぎ」などがあります。
繋ぎの変形に「破れ」や「崩し」があります。
尽し
同じ種類のモチーフを集めたもので、日本古来の伝統文様、「菊」を用いた「菊尽し」や、様々な花が描かれた「花尽し」などがあります。
散らし
基本となるモチーフを全体に散らすように配置した文様です。おめでたい柄の「宝散らし」や斜め縞文様に桜と楓を散らした「桜と楓散らし」などがあります。
流し
流水文とともに描いたもので、桜や楓、鶴、扇面などの組合せが多い文様です。「花鼓に流水」といったように「○○に流水」とも用いられます。
雪持
植物などと雪・雪輪とを組み合わせた文様です。柳や笹、南天などが多く用いられます。
捻じ
モチーフに回転をかけて捻じ曲げて変形させた文様です。菊の花の花びらを捻じって文様化した「捻じ菊文」、梅の花弁がねじれた形になっている「捻じ梅文」などがあります。
踊り
「踊り桐」など、まるで踊っているように、モチーフにテンポをつけて配置した文様のことをいいます。
丸文
モチーフを円の中に納まるように意匠化したり、円形に変形したりしたもので、菊、桔梗、水仙、梅、燕子花など、花を丸型に文様化した花丸文があります。
段
「横段に花」など、文様の構成を横段の島のように切り替えたものをいいます。
雲、霞など、不定形に画面に挿入されたもので、「雲取り」や「裂取り」などがあります。