近年はカジュアルな着物が人気を集めていますが、そういった和装に似合うのが、植物繊維の糸の自然素材で織られた帯です。糸の構成や織りの密度などによって、単衣や袷、夏紬などにあわせて結びます。
上布とは上等な麻織物をさしています。絹や木綿が用いられる以前の着物の素材は、麻が一般的でしたが、その中でも上等とされたのは苧麻(ちょま)の上質の細い糸で織った薄手で軽い麻織物で、これを上布と称していました。
上布の起源は古く、正倉院の御物にも納められています。
上布の原料である苧麻は、絹のような輝きを持つ丈夫な植物で、植物繊維の中でも最も強く、石川県の能登上布、新潟県の越後上布、石川県の能登上布、滋賀県の近江上布、沖縄県の宮古上布、八重山上布等々が知られています。上布は夏帯なので、夏のお洒落着にあわせます。
芭蕉布は、バショウ科の多年草イトバショウから採取した繊維を使って織られた布です。
芭蕉布は沖縄県および奄美群島の特産品として知られ、昔から「パンバルバサー」と呼ばれ、親しまれてきました。芭蕉布は、数多い沖縄の織物の中でも最も古い織物で、13世紀頃にはすでに織られていたと考えられています。
沖縄本島の北部の大宜味村喜如嘉の芭蕉布が国の重要無形文化財に指定されています。張りがあって肌につかないので、夏物にむいています。
葛布とは、山野に自生する葛の繊維を織り上げた布のことです。葛の蔦の繊維からとった糸は、織り上がりが美しく光沢があるので、江戸時代の衣服として人気を呼びました。
現在は、原料不足により生産量は減っていますが、静岡県掛川では今も葛布づくりが行われており、その葛布は、なんともいえない優雅さと、絹や麻にないやさしい、落ち着いた渋みのある光沢を兼ね備えています。
藤は本州から九州の山林に広く分布し、この丈夫な藤蔓の樹皮の繊維からとった糸で織られたものが藤布です。
藤布は、弥生時代からつくられていた原始布のひとつです。
藤布は藤蔓を刈って採取し、洗いながら表皮を剥いで繊維部分を煮て、灰汁を取り出して糸状にしたもの用いてつくられ、しなやかで自然の温かみのある風合いです。
木綿は、綿花から紡いだ糸で織った素朴な風合いを持っています。綿花を糸状に手紡ぎや紡績した糸で織られた木綿は、柔らかで温かく、染色しやすいので、江戸時代から、麻に変わって、全国的に普及しました。近年は、木綿帯びの柄も豊富になってきています。