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九州地方の染織品~鍋島更紗

2016.8.30

九州地方の染織品~鍋島更紗


江戸時代、佐賀鍋島藩で鍋島焼とならぶ特産品としてつくられたのが鍋島更紗です。 「鍋島更紗秘伝書」によると、豊臣秀吉の朝鮮出兵時に、鍋島直茂が朝鮮から連れ帰った高麗人・九山道青が創始したとあります。


鍋島更紗は江戸時代に各地でつくられた一般的な和更紗が手描きや型染めであったのに対して、唯一木版と型紙を併用する独自の技法を発展させたもので、模様に中国や朝鮮の影響があるのが特徴となっています。

鍋島更紗の木版と型紙を併用する技法は、世界的にみても類まれなものです。 木版に墨をつけ、綿の生地に型押しして模様の輪郭を型どり、刷毛などで煎じた植物染料を、型紙の上から摺りこみ、色を重ねるという方法で、濃茶、青、赤、黄色など、全体的に濃厚で格調高い色調となっています。


鍋島更紗は藩の保護を受け、鍋島藩主御用の献上品・贈答品などとして用いられたため、一般には流通せず、門外不出でしたが、天保年間(1830~1844年)にまとめられた「鍋島更紗秘伝書」「鍋島更紗見本帖」には一子相伝の技法が記されています。 明治時代以後は、廃藩置県などにより鍋島更紗の状況は一変し、大正時代には、一旦途絶えてしまいますが、佐賀県出身の故・鈴田照次が、昭和56年から「鍋島更紗秘伝書」と「見本帖」をもとに鍋島更紗の制作技法の研究と復興に尽力し、「木版摺更紗(もくはんずりさらさ)」として発表し、復元を果たしました。


その技は、武蔵野美大で日本画を学んだ息子の鈴田滋人により、さらに研究が重ねられ、創意工夫を加えた高度で独自の作風を確立しました。鈴田滋人は、日本伝統工芸展を中心に作品を発表し、1996年に日本工芸会奨励賞、1998年にはNHK会長賞・第11回MOA岡田茂吉賞工芸部門優秀賞を受賞しました。

親子2代にわたる鍋島更紗の秘伝書による解明と復興、そして「木版摺更紗」の独特の技法による創作活動を続けてきた功績が称えられ、鈴田滋人は、2008年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されています。 鈴田滋人の表現する鍋島更紗は、小さな型の繰り返しによるその連続などの優れた構成力や現代感覚あふれる独特の色調の美しさ、繊細かつ斬新な意匠、技術の確かさなどで高く評価されています。

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