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名物裂~緞子

2016.4.24

名物裂~緞子


名物裂のひとつである緞子(どんす)とは、室町時代末、中国宋代から伝えられたといわれる絹の紋織物です。純子、反子、段子とも書きます。緞子は、布面がやわらかくて光沢が美しく、重量感があるのが特徴です。

緞子は、染織した糸を用いて織る“先染め織物”で、多くは経糸と緯糸の色を変えることで鮮やかな文様を織りなします。


緞子というと、童謡「花嫁人形」の中の「金襴緞子の帯締めながら、花嫁御料はなぜ泣くのだろう…」という歌詞を思い浮かべる方もいらっしゃることでしょう。

ここでは金襴緞子が、贅沢で高価な美しい絹織物の例えとして用いられていますが、緞子も時代に応じて変化し、茶の湯の完成によって、渋い美しさと奥ゆかしい謙虚な表現が好まれるようになります。侘びさびを尊ぶ茶道具では、帛紗や仕覆などに緞子が用いられています。

現在では、歴史的な緞子とは異なる、地紋に光沢のある白生地の染下生地で繻子(しゅす)組織のものを緞子と呼ぶことがあり、振袖や訪問着に用いられています。



代表的な緞子

代表的な名物裂の緞子としては、下記のようなものがあります。


笹蔓緞子


経糸に萌黄色、緯糸に金茶色の糸を用いて、笹の細蔓に梅鉢様の六弁の小花をつけた唐草文を織り出した名物裂です。古来、笹蔓だけを主体とし、古渡り( 室町時代またはそれ以前)は柄も大きく、地室も厚いものが多くみられます。

笹鶴緞子は種類が多く、鳥入笹蔓や宝尽くしの入ったものもあり、時代が下るにしたがって、図柄が小さくなり、地相は次第に薄くなります。


本能寺緞子


本能寺緞子の名称は、京都本能寺の所有であったことに由来すると伝わっています。本能寺緞子は青海波の中に宝を散らし、その中にやや大型の牡丹唐草が点在しており、縁起の良い福徳を招来するという文様で、抜群の吉祥文様とされています。  



遠州緞子


名称の由来は、大名茶人として有名な小堀遠江守政一(遠州は通称)が所持していたことに基づくと伝えられています。中国・明の万暦時代のものに由来し、市松模様の、各々の枡の中に七宝と菊、牡丹、椿の花紋が一つずつ配置されています。紋様の匠な構成と華麗な中に、落ち着いた高尚さがあり、万人に好まれました。



荒磯緞子


平行線で波を表し、その上にやや大柄の躍動した濃いが一列ごとに向きを変えて織り出されています。鯉は出世魚として知られ、現代でも多方面にこの文様が採用されています。



道元緞子


名物裂の中では古い部類に属し、曹洞宗の開山道元禅師の袈裟裂であったと伝えられています。横線を主にした唐草の中に縦一列に梅鉢のようなものが並んで織り出されています。

撚りの強い染糸で細かく織られるので、全体としては柔らかい手触りを特徴としており、茶人の仕覆として最も適した裂地とされています。



利休緞子


数ある中国・明代の中でも、千利休愛用の黒棗の仕覆として今日に伝わるものです。藍色地に黄茶色の五つの花弁をもった梅花文が点々と織り出され、梅花文の動きによって微妙な色合いの地が、波を描かずしてあたかも水面のような効果を表しており、塗器などに広く用いられている名物裂のひとつです。

その他の緞子名物裂

万暦、紹鴎、織部、珠光、正法寺、大友、大谷、足高、住吉など

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