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北海道の織物・優佳良織
北海道の織物・優佳良織
優佳良織(ゆうがらおり)は、北海道旭川市の染色作家・木内綾(1924―2006)が創作した北海道の自然をテーマにした比較的新しい戦後の織物です。
初めは「ユーカラ織」というカタカナ表記でしたが、1980年頃に版画家・棟方志功の命名をもとに「優佳良織」と改められました。
優佳良織の生みの親である木内綾は、最初は趣味で織物の勉強をしていましたが、北海道工業試験場からの依頼で、北海道に新たな独自の伝統工芸をつくるべく、創作活動をはじめました。そして、1962年には北海道の自然をモチーフとして織り込んだ作品を発表し、優佳良織工房を発足しました。
優佳良織の素材は、北海道の綿羊(ウール)です。北海道の綿羊飼育は江戸時代末期に函館の奉行所で羊が十頭ほど飼われたのが始まりで、明治末期には本格的に綿羊の飼育が本格的に行われるようになりました。
この北海道の綿羊の毛で織られる優佳良織は、まず羊毛を洗って染色し、糸を紡ぎ、織り上げていきますが、その工程のすべてが手作業で行なわれています。
北国の自然と四季をモチーフにした優佳良織の一つの作品には、200色から300色の色が使われ、色感の豊かさをだしていますが、この複雑な色を出すために、数種の色の羊毛をハンドカートと呼ばれる小さなブラシ状の道具にかけて、ときほぐしながら、混ぜ合わせ、微妙な色を生み出します。
その後、手紡ぎで糸をつくり、機織りしますが、織りは、綴(つづれ)織、すくい織、浮き織など複数の織り方を組み合わせて織り出されるため、高度な技術が求められます。
こうした複雑な手作業の工程を経て、色彩豊かで、立体的な油絵のような優佳良織の織りの表現が完成されます。
優佳良織には「流氷」「ハマナス」「摩周湖」など北海道の大自然をテーマにした作品群があり、実用性を重んじたものが多く、和洋衣装からスツールの座面や座布団などのインテリアに至るまで、幅広い用途をもっています。
この美しい優佳良織の魅力を、最初に評価したのは、日本ではなく海外でした。優佳良織の創作者の木内綾は、ヨーロッパ各国の展覧会に招かれ、ハンガリー国際織物ビエンナーレ金賞を受賞し、その後は次第に日本国内にも広がっていきました。
現在、優佳良織は旭川市郊外につくられた壮大な北海道伝統美術工芸村にある優佳良織工芸館でつくられており、今や北海道を代表する染織工芸となった優佳良織を二代目の木内和博が守り伝えています。