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青森の染織物・南部菱刺し

2016.5.6

青森の染織物・南部菱刺し


青森の八戸を中心とした、南部藩の所領であった南部地方で古くから刺された横型の菱の刺し子の技法のひとつです。「菱刺し」といわれることもあります。

南部菱刺しも、津軽のこぎん刺しとその始まりの経緯は似ています。江戸時代、麻しか育たない北国の地で、衣類をまかなわなくてはならず、そんな環境の中、寒冷地の工夫として、麻糸を麻布に刺していく「南部菱刺し」が生まれました。


麻布の保温・補強のために始められた南部菱刺しは、刺し手それぞれの美的感性の表現としての構成的な美しさを持つようになりました。


明治維新後には、衣類に関する禁令がなくなり、木綿糸が南部菱刺しにも使われるようになります。明治中期に鉄道が開通すると、毛糸がもたらされるようになり、大正期には、色味のある毛糸を使って色彩豊かな菱模様が刺されるようになりました。

昭和期には南部菱刺しは衰退してしまいますが、現在は、青森県の伝統工芸品にも指定され、美しい手工芸品として、手芸ファンからも親しまれています。




こぎん刺しと南部菱刺し


南部菱刺しは、しばしば同じ青森県の津軽地方に伝わるこぎん刺しと混同されることがあります。南部菱刺しも、こぎん刺しも、ともに平織り麻布の縦の織り目に対し、目を数えながら刺すという共通点がありますが、南部菱刺しは縦糸に沿って偶数の目をすくい、こぎん刺しは奇数目に目をすくうという相違点があります。


こぎん刺しは縦型の菱形であるのに対し、南部菱刺しは、緯糸に沿って偶数目にすくい、次の段で偶数に目をずらしていくので、横型の安定感のある模様になります。



南部菱刺しの基本模様


伝統的な南部菱刺しの単位模様には、当時の生活と密接に結びついていたであろう生き物やモノの名前がつけられたものが多くみられます。

南部菱刺しの代表的な模様としては、ウメノハナ、キジノアシ、クルミ、ソロバン玉、ウロコ、ネコノマナグなどと名付けられたものがあります。これら基本模様のパターンをタイルのように組み合わせて刺していきます。


畑作と漁業を営む地域であった八戸の南部菱刺しは、きものの肩袖部分や股引、前掛けの中央、足袋などに施されました。南部菱刺しの模様は、400種余りある模様の組み合わせや、色彩で変化をつけて表現されます。

南部菱刺しの色には制限がなく、伝統的には、水浅葱色の麻布に、白の木綿糸を刺したもので、大正期以後には、カラフルな毛糸も使われました。毛糸は長く使われるとフェルトのようになり、風を通さなくなり、より防寒性が高まったといわれています。

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