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関東地方の染織品~長板中形

2016.8.11

関東地方の染織品~長板中形


浴衣の代名詞・長板中形(ながいたちゅうがた)


長板中形は江戸時代・寛文年間(1655~1672年)の頃より現代に伝わる技法で、両面糊置きの藍の浸け染です。 「長板」とは型付けのために生地を貼り付ける板のことを指し、「中形」は小紋より小さい模様を意味します。


江戸時代には長板が浴衣(ゆかた)を指す言葉として使われ、明治時代に化学染料を用いた注染中形が普及するまでは、浴衣の主流は長板中形でした。


長板中形は、およそ三間半(約6m50cm)の細長い板に生地を乗せ、型紙を用いて柄に合わせて糊を置き、本藍で染めていく、熟練の技を要する伝統工芸として、今日に受け継がれていますが、大変手間がかかるため、明治時代以降は生産量が激減し、代表的な産地であった江戸(東京)でも、昔ながらの技法を守る工房はごく僅かとなりました。現代においては、伝統的で上質、通好みな夏の着物として、浴衣や単衣としても楽しまれています。


長板中形の技法

江戸中期から伝承される手染加工技術である長板中形は、当時の江戸庶民の湯あがり着、夏の着物である浴衣として日常的に用いられましたが、明治期以降、江戸中形の需要は次第に減少し、昭和期に入ってからは、その伝統技術は保護されてきました。


熟練した技を必要とする長板中形の技法は、重要無形文化財に指定されています。その技術保持者として松原定吉、清水幸太郎が指定されており、その伝統技術は今日まで受け継がれています。


江戸時代から続く両面糊置きの藍染である長板中形の染めの工程は次の通りです。


1.型染技法のひとつである長板中形は、まず約約6m50cmモミの一枚板の上に薄く糊を引いて生地を張り付け、伝統的な渋紙の型紙を使って糊置き(型付け)します。裏面に表とぴったり合わせて型付けするため、裏替えしたとき透けてみえるように、木綿にそまらない染料で赤く色付けした糊を用います。


2.表の糊が乾いたら、生地を剥がして裏向きに板に張り直します。これを一反分行いますが、このとき、表裏の柄がずれないように細心の注意を払いながら、型付けを行います。


3.両面に糊を置き(両面糊置)、それを天日に干して乾燥したら、地入れをして染めます。正藍染ですが、水溶性の糊が緩まないうちにきれいに染め上げるには、熟練の技を要します。伸子を張った反物を藍が建った藍甕でそっと浸し、引き上げて空気にさらしてしばらく置き、また浸します。この工程を2~5回繰り返し、浸染します。最後は、水洗いをし、防染糊を完全に落として乾燥させ、仕上げていきます。


長板中形は、表裏の同じ場所に糊を置いているので、藍地の上の白い部分がくっきりときれいに浮かび上がるのが特徴です。染め上がった着尺の表裏に同じ模様が白く抜け、透けて見えているかと思うほどの、とても精密な柄合わせがなされており、粋で上品な仕上がりになります。

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