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染めの着物~茶屋辻

2016.3.15

染めの着物~茶屋辻


茶屋辻は江戸時代の染色方法の一つで、京都の呉服商・茶屋四郎次郎の考案とされています。

茶屋辻は、江戸時代中期以降、御殿女中の夏の正装として用いられたものです。


茶屋辻を考案した呉服商・茶屋家は、江戸時代の京都の豪商であり、京都の茶屋四郎次郎を本家として、尾州茶屋家、紀州茶屋家に分家し、徳川御三家の公儀呉服師をつとめた家柄でした。茶屋辻は徳川御三家の止め柄(留柄:江戸時代の武士の礼服の小紋の柄)として、一般庶民には手の届かないものでした。


茶屋辻の意味

茶屋辻の「茶屋」は「茶屋染」、「辻」は「帷子(かたびら)」すなわち、夏の麻の着物のことを指しています。 「茶屋染」とは、茶屋家の染める模様染であり、茶屋家の屋号に由来します。

当初の茶屋染は、糸目糊を用いた糊防染による模様染で、技法的には、友禅染に先行した染めの技法でした。


茶屋染は、歴史上の書物では、着物図案帳「御ひいなかた」に「ぢしろ 茶やそめ」と書かれた説明が初出とされ、茶屋辻は、主に白の麻の布に、藍色を基本とし、それに淡黄色を少し加え、金糸や色糸の刺繍を施した麻の着物とされています。


茶屋染の 豪商・茶屋家の屋号に由来する茶屋辻の意匠は、海辺や水辺の風景、楼閣、四季の草花などの風景模様といった細かな絵文様が特色で、藍の濃淡によって模様を染め出し、それに淡黄色を少し加え、金糸や色糸の刺繍を施されています。


江戸時代に流行した茶屋染の「茶」の色は、現代の茶色を含む、赤・黄・緑・グレーを基調とした、広範囲の渋みのある色の総称として使われていました。

少なくとも17 世紀後半までは、その「茶」を専門 に染める茶染師が存在したとされており、茶屋染は、茶染師の染める江戸時代の流行の模様染の名称として使われました。



しかし、17世紀末~18世紀初期に友禅染が普及するにつれ、茶屋染は町方の友禅染に吸収される形で、一般的な染めの名称としての茶屋染は消滅したといわれています。

その一方で、徳川御三家の殿中の衣裳を誂える茶屋家が染めた帷子が「茶屋染」の名で今日まで残ってきたと推論されています。


茶屋模様の帷子という意味の茶屋辻は、元来、麻の単衣で、奈良さらしや越後上布といった高級品の麻布を使って藍染めされた夏の着物でしたが、後に、絹を染めて部分的に赤の刺繍を施した茶屋辻もつくられるなど、近年は例外も多くみられます。

 

茶屋辻の着こなし

本物の茶屋辻は、博物館にいかなければみられないほど貴重なものですが、現在は茶屋辻風に染めた紬の単衣などが流通しています。

茶屋辻は、もともと、徳川御三家の奥女中だけに許されていた柄であったので、品格のある着こなしが大切です。あわせる帯も、格調高く、茶屋辻の着物の柄とあわせた柄行や素材を選びましょう。

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