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沖縄の伝統織物~八重山上布
沖縄の伝統織物~八重山上布
東京から2000キロ、沖縄の南端、八重山諸島で生まれた八重山上布は、大自然の恵みと人間の技の結晶で育まれた、美しい織物です。
八重山上布の起源ははっきりとしていませんが、1615年頃、沖縄本島の機織りの名手が琉球王府の命によって、八重山に渡り、技術指導を行ったのが始まりではないかと伝わっています。
八重山上布も、他の沖縄の伝統染織物と同様、人頭税の制度の貢納布として課せられました。役人の厳しい管理下にあった八重山上布ですが、一方では、薩摩藩を通して、江戸や大阪などへ出荷され、琉球王府においては大変な貴重な織物として存在していきました。
明治時代には人頭税が廃止され、八重山上布の産業化が一気に始まります。産地問屋ができて、八重山上布の反物が販売されるようになり、生産量も増え、今日まで、その伝統技術が受け継がれています。
平織・八重山上布
八重山上布は、白上布とも呼ばれ、白地に焦げ茶の素朴な絣模様が特徴です。八重山上布の糸の原料は、宮古上布と同じ苧麻で、茎から繊維を取り出すウーウミという工程は、宮古上布と同様に大変根気のいる作業です。
一人で一反の糸を績ぐためには1~2年かかるといい、近年は、績み手の高齢化に伴い、若手の育成に力が注がれています。
軽やかさと清涼感のある八重山上布の染色技法としては、摺り込み捺染(なつせん)と摺り染めが用いられますが、摺り込み捺染が使われるのは、多種多様ある沖縄の伝統的染織物の中でも八重山上布だけです。
摺り込み捺染とは、布の表面に型を置き、染料を含ませた刷毛で種々の色を摺り込んで模様を摺り込んで染め出すもので、八重山上布では刷毛を使ってルー(紅露)の染液を直接糸に刷り込んでいきます。
ルー(紅露)は、八重山上布独特の染料で、石垣島や西表島の山林に自生しているヤマイモ科の植物が原料です。紅露は、若いものは橙色に近く、年月の経っているものほど濃い赤茶色で染料には適しています。
重山上布ではこのルー(紅露)という染料を使って、竹の櫛で差し込む様に擦り込んで糸を染めていきます。この作業を「捺染(なっせん)」といいます。
染色が完了した糸は、製織され、天日乾燥の工程に入ります。 織り上がった八重山上布は1日8時間の約10日間天日乾燥させ、色止めのために海中で5時間位晒す「海晒し」が行われます。
その後、海水を充分に水洗・蒸してから干し、杵たたきして完成します。 八重山上布は一反織るのに、通常1~2週間かかるといわれます。
現在は、八重山上布の原料である苧麻でつくられた麻糸が稀少となり、平織の経糸に、ラミー糸を使用することが多くなっているそうです。
織り手も数えるほどしかおらず、後継者の確保も難しため、八重山上布の稀少性が高まっています。